ものがたり

赤沼の章 閉じ込められた竜

 むかしむかし、白石川に竜が住んでいました。
 その中に二匹の若い竜がいて、、どちらも強くて美しい竜でした。長老の竜はどちらかを将来白石川の主にするつもりでおりました。それで事あるごとに二匹にいろいろ競い合いをさせていました。
 川のそばにはカワセミが住んでいました。二匹の竜が競い合いをする度に、川魚が逃げていくのでカワセミにとっては、魚がとれず大変迷惑でした。
 ある日、二匹の竜が河口まで競争することになりました。それを聞いたカワセミは
(二匹のうちの一匹がいなくなれば、競い合いがなくなって、川が静かになるはずだ)
と競い合いを始めた竜のところへ飛んでいきました。
大河原あたりに来たとき、先頭を泳いでいた竜に声をかけました。
「ここから船岡の方に折れて、角田の方へいき阿武隈と合流する近道があるよ」
竜は、不思議そうに答えました。
「ほう、そんな流れができたのかい?」
「この間の大雨でできた小川らしい。そちらの方が早いかもしれないよ」
竜は考えました。
「一見回り道のようだけど、新しい流れを試してみるのもいいかもしれない」
そういうわけで、今の館山裏手から山崎山公園の麓へ流れて行きました。
 ところが突然小川に竜が流れてきて川幅を広げたものですから、そのあたりの山や沼の主はびっくりしてしまいました。竜が先に進んでいくと、大沼の主のナマズが 「かってにこっちに来ては困る!」と行く手をふさいでしまいました。それで白石川に戻ろうと思ったら、今度は山崎山の主の天狗が、
「これこれ、急に小川に入ってきてはこまる!」と山の斜面を伸ばしてふさいでしまいました。
 それで竜は閉じ込められてしまいました。その様子を空から見ていたカワセミは大笑いしました。
「なんと言うことだ。すっかりだまされてしまった。あぁ、これでは川にもどれないではないか。」と怒りながらぐるぐる同じ所を回り続けて、あんまりくやしがるので、体がどんどん熱くなり、水が赤くなってしまいました。
 やがてこの沼は赤沼と呼ばれるようになりました。そして沼の先の方には温泉がでたそうです。

陶久尚子・作