ものがたり

久圓寺の化け猫

久圓寺の化け猫今から七百五十年程前に山崎山に日蓮宗の寺で久圓寺(くおんじ)という古い寺があったと。その寺に歳を取った古い猫と、老いた僧とが住んでおったと。
その僧も、ふとした事から病の床につき、病死してしまったと。空き寺となったその寺に住みついている古猫だけが残ったと。のち、日蓮宗の行者という、老夫婦がその寺に住みついたと。
ある日のこと、爺さんは山を下って三界小路のある家に、秋の部落の契約の事について話し合いのため出かけて行ったと。婆さんは爺さんの帰りがあまりにも遅いので、
「爺さんは、今頃何をして遊んでいるのだろう」
と、独り言の様に猫に話しかけたと。そしたれば、その古猫ぐらり起きあがり、爺さんの行っている三界小路へ走り、様子を見て帰り婆さんに告げたと。
「今は契約振る舞いも終わり爺さんのオハコ、いつものお国浄瑠璃『今川二度の忠臣の段』をやっているところ。今俺がそれを歌い語って聞かせっすから、爺さんが帰ってきても黙っていてくれろ。もしその事を爺さんに告げたら、婆さんの命は無いよ」
と言いながら、猫がすくっと立ち上がり爺の姿になって浄瑠璃を語りだしたと。
その晩爺さんは、ご馳走を頂いて遅くなって帰って来たと。婆さんは恐ろしくて恐ろしくて爺さんにその事を聞かせてしまったと。
翌朝、爺さんが婆さんの居ないのに気づき、婆さんを捜していたら裏の物置きの前で、婆さんが喉笛をかみ切られて死んでいたと。また、それより古猫の姿を見た者はいなかったと。
その後、爺さんは婆さんを懇ろに供養して、その地を去って石巻の方へ行ったとか。
 それからというもの、縁起が悪いというのでその寺に入る者とて無く、いつともなく廃寺となり、のち火災にあい建物も焼失してしまったと。
今はその寺の跡は整地され、公園として親しまれ、町民の散策「憩いの場」として利用されている。
現在の山崎山公園である。

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