ものがたり

午(うま)と牛

午(うま)と牛昔、昔、奥州は船迫に有名な学者さまがおったんだとさ。
ある暖かい日、学者先生が弟子を二人連れて、田舎道を通ったんだど。ちょうど馬小屋の前を通ったら、馬が廐栓棒から頭を出していたんだど。そしたら学者先生は、弟子に、「やあ見ろや、あそこに牛がいるな」というんだど。弟子たちは、「牛でがえん、午でがす」といったんだとさ。すると学者先生が、「いや午でねえ。牛こだ」と、なんぼ馬だといっても、牛だとがんばる。
「先生、なんぼいってもわがんねえんだね。おれたち二人で四つのまなぐで見たんだからまちがいねえがす。あれは確か午でがす」といったんだど。そしたら学者先生、「あれは確かに牛だ。おまえら頭を冷やして寝て考えろ」といったんだど。
弟子たちは、腹いっぱい飯ば食ったあと、寝ながら考えたんだとや。
そしたら、二人はやっとわかったんだど。
「先生、先生、やっとわかりすた。あれは牛でした。牛になりすた」といったんだとや。
「やっとわかったか。午という字は、廐栓棒二本から上さあ頭を出してねえべや。牛という字は廐栓棒から頭出していっぺいや」といったんだとさ。
“飯食ってすぐ寝ると牛になる”というのは、ここから出たんだとさ。

* 廐栓棒(ませんぼう)とは、馬小屋の入り口をふさぐ棒のこと


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