ものがたり

桑の木のお見舞

桑の木のお見舞 むかし、むかし、羽山の森に大きな大きなくるみの木があったんだとさ。
 或る時、村の木こりが、ぜにもうげすっぺと思って、くるみの木ば切っさ行ったんだど。
くるみの木は、あんまり大きいもんだから、晩げまで切っても半分しか切らんねがったんだと、また次の日行って見だっけ、きのうな切った分くっついで、もとのようになっていたんだど。
 きこりは毎日、毎日、くるみの木を切っても、また元どおりになるもんだから、ふしぎでふしぎでしかたがねがったんだど。きこりは、なんでこだごどになっか、隠れて見ていたんだど。そしたっけ、そっちから、あっちがら木どもが入れかわり、たちかわり、お見舞いに来てけったんだど。
 「くるみさん、くるみさん、こんなに切られて、らぢもねえごってすね」というと、くるみは、「いやいや、まだまだ大丈夫でがす」と言ったんだど。
 そこさ、桑の木が来たんだど。そしたっけ、くるみの木は、「おめえは、木だか草だがわがんねえ、お見舞いをもらっても、もらったかいがねえや」と言ったんだど。そしたら桑の木は、まっ青になってごっしゃいで、「どこに、見舞いさ来てけたのさ、そんな言い方ねえべや。おれだって本気になって見舞いさ来たんだぞ。切った木くず焼かれたらええべや」と大きな声で悪口言って、桑の木は帰って行ったんだど。
 それを遠ぐの方で、だまって見ていたきこりは、次の日、木くずを集めて焼いてしまったんだとさ。そして、とうとうくるみの大木は、きこりに切りおとされてしまったんだとさ。
 人に親切にされたり、お見舞いもらったら、有難うさんや、恩を忘れねえこったとさ。

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